過去を振り返る

工事前の手の間/2005年10月
工事前の手の間/2005年10月

今年は何かと人前で話す機会が多い。その際に求められるテーマは「手の間を通じて実現したいことは何か」というものが大半だ。

 

多くの人にとって「手の間」という言葉の響きが何を意味するのか気になるらしい。また幸か不幸か、発行している雑誌が少部数というのも手伝って、「コツコツとものごとを掘り下げて取材している人々」というイメージを持たれているようだ。

 

実際のところ、私は、あまり深く自らのテーマを考えてはいない。目の前の業務をやっつけることに日々終始している。けれど、人様の前で話をするとなると、面倒でも過去の日々を振り返り、関わってきた仕事の意味を整理しなくてはならない。そうやって改めて、働いてきたこの25年間を客観的に見つめてみると、全く意識していなかったけれど、私の興味の対象は「人」にあるということがわかってきた。

 

『手の間』の「手」が意味するものは、文字通り「手・てのひら」だ。そこから、「人の手技」→「手仕事」→「工芸品」と連想し、「手の間は伝統工芸を取材する雑誌ですか?」と質問されることもある。確かにその一面もあるが、「手・てのひら」に私が託したものは、「人間」や「人生」だったのだと、今さらながら気づいた。