13歳、若返りたいけれど……。

大潟村の風景。見渡す限りの稲原。
大潟村の風景。見渡す限りの稲原。

 一昨日、私は自宅で缶詰になって原稿書きをした。文章量は4500〜5000文字。ボリューム自体は苦ではないが、数日間の旅を紀行文風にまとめながら、旅人(クライアント)の心に芽生えた自己啓発的な気づきや想いも織り込まなくてはならない。それがややこしい。

 

 もともと自分の文才を信じてはいないが、それ以上に悩ましいのが、私と旅人とのジェネレーションギャップだ。我々の間には13歳の年齢差がある。つまり、私がすでに社会人として働いていた時、旅人はまだ小学生。感性はもちろんのこと、育った環境や時代背景が違いすぎて、旅人がハマるツボを探るのに時間がかかる。私は必死で旅人の目を持とうと…いや、「いたこ」になろうと神経を集中させる。

 

 今回の旅先は秋田県大潟村。長年、減反政策に反対し続けてきた涌井徹さんが、今回の農家戸別補償制度に賛同し、減反を受け入れた背景にある事情と戦略をうかがうことが軸だ。米の自主流通が規制されていた当時、「ヤミ米」協会を率いる涌井さんは度々メディアに取り上げられ物議を醸してきたことを、私はリアルタイムで知っている。しかし、旅人にその記憶は遠い。当然だ。

 

 私は、旅人と等身大の心を持てたらどんなにいいだろうと思う。と同時に、私が13歳若く、旅人と同じ時代を生きてきたとしたら、今頃どこで何をしているだろうか、とも思う。私が就職した年は氷河期で職はなく、もちろん、男女雇用機会均等法など成立する前の話。今のように、帰国子女や留学経験者があふれているということもなかった。ネットどころか、携帯電話すらない私の十代、二十代。

 

 なんとか原稿を納品し、仕事仲間とブレスト飲み会をした昨夜のこと。話題がオイルショック時のトイレットペーパー買い占め事件におよんだとき、みんなの表情からスーッと活気が消えた。そして一人が「ええ、母から話を聞いたことがあります」と言った。そうだった。彼女たちは旅人と同い年。オイルショックは生まれる前の話だ。13歳の年の差を埋めるのはなかなか厳しい……そう悟った瞬間だった。