クリスマスの花籠

赤白緑。確かにクリスマスカラーではあるが。
赤白緑。確かにクリスマスカラーではあるが。

月に3回、木曜にお花のお稽古をしている。手の間から歩いて10分ほどの場所にある「花屋Ogami」の2階がお稽古場。きっかけは、手の間8号でも紹介している大神嘉彦さんに、ある作家の個展会場ディスプレイをお願いしたこと。その折に、彼の花屋で草月流の先生をお迎えして教室を開いていると知り(大神さんも草月流の師範)、通うことに決めた。

 

忙しい身では月に3回のお稽古を続けることは厳しい。が、幸い会場が近所なので、昼食時間をなんとかやりくりすることでクリアしている。ただし滞在時間が30分ほどなので、活け込みは1回勝負。花を手にするまでは山積みの仕事が気になって「お稽古どころじゃないよなぁ」と気が重いが、不思議なことに活け始めるとそんなことは忘れて形と色彩の世界に没頭してしまう。多分、程よい気分転換になっているのだろう。

 

通い始めてまだ8カ月の私は、基本の形を繰り返し活ける。先生の口から何度となく聞かされる「シン、ソエ、ヒカエ…」の言葉が耳底にこびりつき、トライアングルのように動く先生の指先がまぶたから離れない。その三角形がなぜ美しさの基本なのか、私にはその理由がまだ理解(体感)できていない。内心いつも「そんな枠を取っ払って自由に活けたい!」と思っていた。

 

いよいよその時がやってきた。今日のお稽古はクリスマスがテーマの特別バージョン。いつもと花材が違う上に、好きに活けていいとのこと。しかも花器に活けるのではなく、オアシスを使って花籠のように盛るのだ。若い頃、フラワーアレンジメントを囓った私は、その経験も生かそうといつにも増して集中した。

 

しかし、完成したのは妙に和洋折衷の花籠。ゴージャスなのかうるさいだけなのか、なんとも納得のいかない花籠となった。抱えて事務所に戻ると、スタッフから「何事ですか?」と驚かれた。そう、それは手の間には全く似つかわしくない姿をしている。まるでドレスコードにひっかかった年増の風情だ。先生が指導してくださる基礎がまだ身についていない今の私にとって、自由に活けるというのは無理な話なのだと、ため息が漏れた。何事も応用の前に基本形が大事ですなぁ。