南国の空気は熟れた果実の香り

薬膳のような料理。宮古島で人気の民宿にて。
薬膳のような料理。宮古島で人気の民宿にて。

20日〜21日と某企業広報誌のロケハンで、宮古島へ行ってきた。島は想像以上に暖かく、長袖Tシャツという軽装でも、車内で日射しを浴びていると汗ばむほど。思わずクーラーをかけた。それにしても暑い地域へ行くたびに感じるのだが、空気中に漂うあのエキゾチックな香りは何だろう?ココナッツオイルのような、バラの花のような、一瞬くらっと目眩がしそうなほどむせ返る香り。私は嫌いではない。


その香りを懐かしく感じてしまうのは、私が一時期暮らしたダルエスサラームにも、同じ香りが充満していたからだろう。その家の庭では赤いブーゲンビリアやハイビスカスが咲き、椰子の木が茂り、パパイアもアボガドも実った。情熱的な花々や南国果実の香が混じり合い、熱せられた空気に溶け込んでいたのか。太陽が高くなるにつれ、何とも言えない甘い香りが濃くなっていった。


宮古島で食べた野菜は、ほとんどが薬草と言ってよい。評判どおり美味しいのだが、軽く茹でた程度や生食では、食べ続けるにはやや胃が辛くなる香気とえぐみがあった。また、基本的な調味料文化が本土と宮古島では大きく異なるため、一皿一皿の味わいが妙にスパイシーに感じられ食べ飽きた。味付けに島胡椒や粉ピーナツ、黒糖といったパンチのある素材が多用されていたからだろう。


私の身体が喜んだのは、果実だ。市場で食材のリサーチをすると、見慣れない野菜や肉、魚より何より、果実に目が向いた。宮古島は今、メロン栽培の最盛期らしく売り場にゴロゴロと並んでいた。その味わいはマクワウリを思わせるシンプルさで瑞々しい。私の指ほどの長さのモンキーバナナは、デラウエアの香りとオレンジの酸味が混じり合う複雑な風味。日頃食べているバナナは何なんだ!と思うほど、島バナナは圧倒的に美味しい。そして、実の中までが赤い(私が今まで食べてきたのは皮は赤く実は白)ドラゴンフルーツとグアバをたっぷり使ったジュースを飲むと、まるでイチゴのよう!それらの果実は私の血管の隅々にまで行き渡り、身体中をきれいに掃除してくれたような気がした。フレッシュ!フレッシュ!リフレッシュ!だ。


で、お土産につい果実を買い込んでしまった。メロン、島バナナ、ドラゴンフルーツとグアバの冷凍ペースト(10袋も!)。それに、未体験のアマサンというオレンジにアケビのような形のサポジラ。そういえば、ダルエスサラームでも一番美味しかったのはマンゴーだったな。島バナナはなかったけれど、赤い皮のむっちりしたバナナは酸味と甘みが豊かで美味しかった。どれも太陽の日射しをたっぷりに浴びて熟れた果実本来の味がした。やっぱり南国の空気に混じる濃厚な甘さは果実から発せられているのだろう・・・と、ありえない美味しさの島バナナを食べながら、改めて確信している。