アクすくい。

私がアクをとった鯛。
私がアクをとった鯛。

今年のやりたいことのひとつに、料理教室に通うということを挙げていた。それが2月になってようやく実現。師事したのは、畏れおおくもあの檜山タミ先生。食べるのは好きだけれど、料理のイロハもわかっていないド素人が(しかもこの歳になって!)、熟練した弟子集団と評判の『檜山塾』に、今さら加えていただけるのか心配したが、タミ先生はやさしく「どうぞいらっしゃい」と迎えてくださったのだ。有り難い。


緊張の第1回が、今週7日(月)に開かれた。かっぽう着と手ふきタオルと手帳を抱え、いそいそと先生のマンションに向かう。が、教室ではすでに今日の献立の下ごしらえはほぼ終了していた。遅刻はしていないのだが・・・。今までさんざん料理人や料理研究家を取材してきたが、料理教室の仕組みを取材した経験はない。なので、この段取りの意味が分からない。


しかし、私は新参者。いくら年長者とはいえ、テキパキと動くお弟子さんたちを傍観し、タミ先生と談笑するわけにはいかない。何か手伝わなければ!この心理状態は、姑や小姑に気に入られようと頑張った、結婚1年目の大晦日の台所と同じ。そして手も足も出ないのも、同じ。


実は、この教室には男性参加者が2名いて、彼らは主に先生との会話を楽しみながら、料理からは程よい距離を置いている。どちらかと言えば、実践よりも理論と味見に重点を置いている気配。ホントは私もそうしたいのだが、初回から同じテーブルに腰を据え、談笑に加わるのもいかがなものか。私は鯛の皮をはいでいる女性に恐る恐る声を掛け、なんとかゲットした仕事は、アクすくい。分相応の仕事に、ちょっとホッとした。


この日の献立は、潮汁、鯛の刺身、くもこの茶碗蒸し、金柑の甘煮。印象的だったのは、潮汁だ。これは鯛の中骨とアラだけで出汁をとり、昆布は使わず、塩で調えるだけ。蕗の薹の花の部分をつぶしたものと柚子を添えるが、まず柚子がふわりと香り、しっかりした味わいの汁を堪能した後に、蕗の薹の苦さが追いかけてくる。美味しかった。


山葵をすりおろすとき、先生はカワハギの皮をカマボコ板に巻いて作った手製のおろし器を見せてくださった。「鮫皮のものがいいけれど、なければ自分で作ればいいのよ」とおっしゃる。こういう柔軟な発想が私は好きだ。今は、先生のレシピ説明は半分程度しかすんなり頭に入らないが、道具のことにしろ食材のことにしろ、メモだけはしっかり残していずれ実践できるようになりたい。