未来ちゃんの眼

ネットで話題になっていた「未来ちゃん」の写真集を書店で見つけたのは、この春のこと。佐渡に暮らす女の子の“やんちゃな四季”を記録したもので、天衣無縫・天真爛漫な姿に、とても人間の子どもとは思えず、つい手にとってしまったのだ。「この子の親は何をしてるんだ!」と驚愕するような場面もあるが、キラキラと輝く澄んだ目でじっとこちらを見つめる未来ちゃんと目が合うと、家に連れて帰らずにはいられなかった。

 

以来、疲れたなぁと思う夜、パラパラとめくっては未来ちゃんの姿に元気をもらっていた。写真集の中で一番のお気に入りは、ピンクのバケツ(?)のお風呂に入り、難しそうな顔をしている未来ちゃんだ。おそるおそる、お地蔵さんやサボテンや人形を眺める未来ちゃん、側溝に寝そべる未来ちゃん、青っぱな全開で泣いている未来ちゃん、かき氷を餅を、そして雪までも頰張る未来ちゃん。暑さ寒さをものともせず、蒼い海に飛び込み雪の上を転げ回る、好奇心と喜びに満ちた生命力の塊だ。その姿に「綿の国星」のチビ猫がだぶった・・・って、古いですねぇ。

 

福岡パルコでは、現在、『未来ちゃん』の写真展を開催中。内容はほぼ写真集と同じだが、写真集よりもキョーレツなインパクトで伝わってくるのは、未来ちゃんの眼を通して見た佐渡という自然の雄大な包容力と美しさだ。そして、一時代前にも見える田舎の暮らし。

 

桜の老木の根元に咲く黄色いラッパ水仙、まぶしすぎる海、秋の紅葉、柿の実、彼岸花。季節毎に色彩あふれる佐渡の地を、やがて包み込むのは白い雪だ。つららから滴る水を大きく口を開けて受け止めた未来ちゃんは、船着き場の向こうに連なる雪山を眺める。上空には青い空。冷たい静けさの中に立つ女の子の眼には、何が映っているのだろう。いつの間にか、50歳の自分が違和感なく未来ちゃんと同化し(失礼!)、遠く白い頂を見つめているような清々しい気持ちになった。

 

という訳で、最近、お疲れモードの私の身体に元気と潤いを与えてくれた写真展。写真集ではつい未来ちゃんの奇妙な動きに引き込まれてしまうけれど、写真展には“未来ちゃんの眼”を通して見た、かけがえのない日本の姿がある。そんな日本を心に焼き付けて育つ未来ちゃんの未来に、ワクワク。