北と南の交流展、始めました。

盛岡市内には大きな木が多く、それもまた心地よい空気を漂わせる。石割桜は象徴的な存在。春に咲くところを見てみたい。
盛岡市内には大きな木が多く、それもまた心地よい空気を漂わせる。石割桜は象徴的な存在。春に咲くところを見てみたい。

7月27〜29日の3日間、岩手県は盛岡市のギャラリー「ひめくり」さんで『手の間展』を開いてきた。おかげさまで大盛況! 3坪ほどの展示会場に、200人以上のお客様がお越しくださっただろうか。連日、人波は途切れることなく続き、作品の説明に追われながらも楽しい時間を過ごせたのは、ひとえに盛岡の方々のやさしさと街のたたずまいの良さゆえ。みなさん、本当にありがとうございました!

 

初の出張手の間展では、16作家のものを紹介した。陶器を中心に紙もの、食品、写真など。盛岡へ持って行く作品選びで念頭に置いたのは「風土」だ。北に暮らす方々に、作品を通じて九州を感じていただきたいという思いがあった。我々の解説に熱心に耳を傾けてくださるお客様の姿に、思いは伝わったという実感があったのはとてもうれしいことだった。

 

北の街に九州の作品を並べてみて初めて、わかったこともあった。“九州もん"は逞しいということだ。原初的とも泥くさいとも言えるかもしれない。線が太く、重量感があって、やや熱を帯びている。対する北の作品は、すっきりと涼やかで、力強さとしなやかさが同居する繊細な美しさを感じた。それは空気も同じ。盛岡と福岡では日中の気温は変わらず35度程度まで上がるが、熱の余韻を夜に引きずる福岡と違い、盛岡の空気は夕暮れ時を境にスッと軽くなる。この人心地つく感覚が、たまらなくいい。

 

「白鳥がいなくなったなぁと思ったら一斉に花が咲いて、鮎を釣る人の姿が現れ、やがて鮭がのぼり、雪が舞って氷が張る。中津川の四季は、盛岡人の心象風景です」という言葉を、幾人もの人から聞いた。街中を護岸工事をしていない川が流れているという風景もすごいが、ビルのそばで当たり前に鮎釣りをする人がいることに驚いた。しかも秋には鮭まで遡上するとは・・信じがたい!

 

「ひめくり」さんの前を中津川は流れ、向こう岸ではブラスバンドの県大会を終えた高校生の集団がバスに乗り込んでいる。「さんさ踊り」祭りを数日後に控えた街はどこかあわただしいが、釣り人はまだまだ竿をしまいそうにない。鮎や山女魚を追いかけて山中深く分け入る友人に、中津川の話をしたらどんな顔をするだろう。川を渡る風に吹かれながら、私は福岡の街を思い浮かべた。